法律Q&A

法律Q&A

会社法

取締役会の特別利害関係取締役

1. 特別利害関係取締役にあたる場合

取締役会設置会社で、取締役会の決議をする場合に、特別利害関係取締役は議決に加わることができないと聞いています。どのような場合が、これにあたりますか。

主なものは、下記表の通りと考えられています。
条文は、会社法を示します。

 

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2. 特別利害関係取締役の審議参加の可否

特別利害関係取締役は、定足数や議決要件の算定の基礎にされないとしても、取締役会の審議に参加できるでしょうか。

否定説、肯定説が分かれています。しかし、肯定説でも、取締役会は必要に応じて退席を求めることができると解されており、一方、否定説でも取締役会がその者に意見陳述・釈明の機会を与え、席に留まることを認めており、実質的に変わらないとされています。裁判例は否定説です。

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3. 特別利害関係取締役の議長として議事進行の可否

特別利害関係取締役は、議長として議事進行にあたることができるでしょうか。

2 の否定説に立つときは、当然に否定されます。肯定説に立つときは、説が分かれ、手続の公正を期すために否定する説が多数です。裁判例は否定説です。

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4. 特別利害関係取締役が取締役会の決議に加わった場合の決議の効力

特別利害関係取締役が、決議に加わった場合は、議決の効力はないのでしょうか。
また、議長となって議決した場合は、どうでしょうか。

無効となります。しかし、特別利害関係取締役を除いても決議に必要な多数が得られていれば有効とされています。特別利害関係取締役が議長になって決議した場合は、無効となりますが、反対の見解もあります。

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利益相反取引

1. 取締役の利益相反取引

私が金融機関から融資を受けるに際し、私が取締役を務める株式会社に保証をしてもらおうとしましたら、金融機関から利益相反取引にあたると言われました。利益相反取引とは何でしょうか。
また何が問題になりますか。

取締役と会社が直接又は間接的に取引をする際、その取引によって、会社の利益が犠牲にされることで取締役が利益を得るなど、会社と取締役の利益が相反する場合には、会社の承認が必要となります。

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2. 承認手続・違反の効果

1 で会社の保証を受ける際、会社の承認がいるとのことなのですが、どのような手続になりますか。
また、承認が得られない場合はどうなりますか。

取締役会が設置されていない場合は株主総会で、設置されている場合は取締役会での承認が必要となります。承認がない場合、取引は相対的無効となります。また、承認があったとしても、取締役が会社に損害賠償責任を負う場合もあります。

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3. 事例1 ~直接取引の例

私(A)は、甲会社の平取締役で、乙会社の代表取締役も務めています。乙会社には、私以外にもう一人、代表取締役Bがおり、Bは甲会社とは何の関係もありません。Bが乙会社を代表して、甲会社と取引する場合は利益相反取引にあたりますか。

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Bが乙会社を代表することで、形式的には、Aが第三者である乙会社を代表することにあたらず、利益相反取引には該当せず、甲会社の承認は不要と考えられます。

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4. 事例2 ~間接取引の例

3の事例で、乙会社が第三者Dに対して債務を負っている場合に、甲会社がこれを保証することは、間接取引にあたりますか。

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あたると考えられます。甲会社の承認が必要となります。

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退任後の取締役の競業避止義務

1. 退任後の取締役の競業避止義務

退任後の取締役は、競業避止義務を負いますか。

取締役の退任後の競業は、原則として自由であり、競業避止義務を負いません。
ただし、判例の中には、肯定したものもあります。

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退任後の競業避止義務に関して合意がある場合はどうでしょうか。その合意は有効ですか。

退任後の取締役も、職業選択の自由を有しているとともに、生計の途を確保する必要がありますから、退任後の競業避止の合意が全て有効になるわけではありません。しかし、その合意に時間的、場所的、職種的に合理的な制限が加えられており、代償措置がもうけられている場合には有効になると理解されています。

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上記考慮要素は、それぞれ具体的にはどのような限度で合理的と判断されていますか。

各考慮要素は、総合的に判断されており、各考慮要素の許容範囲を一義的に明らかにすることは困難です。

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代償措置としてはどのようなものが求められるのでしょうか。

競業避止義務を負う対価としての金銭給付の他、加算した退職金が支払われている場合、在任中の給与などの金額が高額の場合に、代償措置ありとして競業避止合意が有効とされた例があります。

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競業他社から従業員や役員を雇い入れる場合に注意すべき点は何ですか。

競業避止に関する契約や合意があるかを確認する必要があります。そのような契約がある場合は、まず、職種限定がどのようなものかを確認しましょう。同時に、前職で、具体的にどのような業務(技術分野、営業取引先)に従事していたかを採用・就任前に聴き取り書面化しておきましょう。特に技術情報の場合は、自社の技術担当者も同席して、具体的に前職で開発した技術内容について聴き取ります。このようにして雇入れ・就任リスクを査定します。

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取締役の会社・第三者に対する責任

1. 経営判断の原則

私は、ある会社の代表取締役をしていましたが、新たな事業展開に失敗し、損を出してしまいました。すると、他の取締役から、個人で損を埋めろと求められました。私は会社の業務執行として事業展開をしたのに、個人責任を負うのでしょうか。

損が出たからといって、直ちに損害賠償義務を負うものではありませんが、経営判断の原則に照らし善管注意義務や忠実義務を尽くしたといえない場合には、会社に対して損害賠償義務を負うことがあります。

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2. 平取締役の監視義務

私は、30年間勤めた会社の取締役に昇格しました。しかし、当社は、創業者一族が会社の上部を占めており、私のような立場の者が意見を言うのは難しい雰囲気があります。私は、偶然、会社の代表取締役が、その親族の経営する会社に無担保で多額の融資をしていることを知ってしまいました。私はどうすべきなのでしょうか。

取締役会や監査役に報告するなどして、監視義務を尽くす必要があります。また、取締役会が開かれない場合には、自ら招集を求める必要があります。

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3. 社外取締役の責任限定

私は、知人から、知人が営む会社の社外取締役に就任してほしいと頼まれました。しかし、私が取締役の業務に割ける時間にも限界がありますので、普通の取締役と同じような責任を会社に対して負うことは無理です。社外取締役ということで責任を軽くすることはできるのでしょうか。

社外取締役等は、会社との間で定款の定めに基づき責任限定契約を締結することにより、会社に対する任務懈怠による損害賠償責任の範囲を限定することができます。

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4. 取締役の第三者に対する責任

私は、最近、知人に頼まれて、知人が経営する小規模な会社の取締役になりました。その会社は、一応取締役会設置会社ですが、実際には取締役会が開かれることはなく、私は名前だけの取締役でした。実は、その会社は詐欺的な商法で物を売りつけていたようで、ある日、突然、私に対して損害賠償請求するという通知が来ました。私は、責任を負うのでしょうか。

いわゆる名目的取締役として責任を負わない可能性もありますが、他の取締役らに対する監視義務を怠ったとして責任を負う可能性も十分にあります。

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使用人兼務取締役の法的地位について

1. 使用人兼務取締役

株式会社において、使用人を兼務する取締役は認められますか?
またその場合には、会社とどのような関係になりますか?

使用人兼務取締役は、現実に多くの株式会社で採用されており、これを認めるのが通説的な見解です。委任契約に基づく取締役としての地位と、労働契約に基づく使用人の地位が併存することになります。

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2. 報酬

使用人兼務取締役の報酬を定めるにあたっては、どのような手続が必要でしょうか?
使用人としての給与を別途支払う場合はどうでしょうか?

取締役の職務執行の対価として支払われる報酬については株主総会の決議によることが必要です。
使用人として受ける給与については、取締役会の承認が必要ですが、あらかじめ取締役会の承認を得て一般的に定められた給与体系に基づいて給料を受ける場合には、その都度承認を受けることは必要ではありません。

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3. 就業規則と懲戒

使用人兼務取締役は就業規則の適用を受けますか? また、懲戒事由に該当する場合には懲戒ができますか? その場合、取締役の地位はどうなりますか?

使用人としての行為については、就業規則の適用があります。懲戒事由に該当する場合には、使用人に対する懲戒が可能です。ただし、取締役としての地位に関しては、会社法等に定められた別の手続が必要です。

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4. 役員出向

株式会社の使用人に対して、その地位を有したまま、関連会社の取締役に就任するよう出向を命じることはできますか? 就任後に、出向元を退職した場合はどうなりますか?

取締役の就任については、使用人の個別の同意が必要と考えられます。就任後の事情による出向元、出向先との関係については、合意(出向契約)の内容にもよりますが、出向元を退職したことにより、当然に取締役としての地位を失うものではありません。

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株主総会の招集手続

1. 招集通知

友人3人と新しく会社を立ち上げました。取締役会は設置せず、株式も公開していません。この度、初めての定時株主総会を開催します。株主総会はどのように招集すればよいでしょうか。

非公開会社かつ取締役会非設置会社で複数の取締役がいる場合、取締役の過半数で株主総会の招集を決定した上、取締役が、株主総会の日の7日前(定款に別の定めがある場合には定款に定められた日)までに株主に招集通知を書面その他の方法により発送することが必要です。

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2. 電子提供制度

株主総会の招集通知に添付する参考資料を郵送するのは煩わしいです。ウェブサイトからダウンロードしてもらうことはできないでしょうか?

元年法の下では、定款に定めを置くことにより、株主総会資料を電子的に提供する措置が利用可能になります。

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3. 株主総会の簡略化

株主数が少ないので、株主総会をできるだけ簡単な方法で実施したいと考えています。株主総会を簡略化する手段はないでしょうか?

①株主総会の招集手続を省略する方法、②株主全員が株主総会に出席する方法、③書面決議による方法が考えられます。

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4. 招集手続の瑕疵

株主総会を開催しましたが、株主から、招集通知が期限内に届かなかったので決議は無効だとの指摘がありました。その株主は株主総会が開催されることやその内容も十分知っており、出席もしていました。この株主総会での決議は無効になってしまうのでしょうか。

株主総会決議は、裁判所の判決により取り消されない限り有効です。株主総会決議取消しの訴えが提起された場合、招集手続が法令又は定款に違反しており、その違反の事実が重大で、かつ、決議に影響を与える場合には、判決によって効力を失う可能性があります。もっとも、本問の場合、訴えが提起されたとしても、裁判所は裁量により請求を棄却すると考えられます。

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役員へのインセンティブの付与とコントロール

1. 会社補償

株式会社の役員が業務遂行において第三者に損害を与えたため、役員が損害賠償をした場合、株式会社がその賠償分を役員に補償したり、役員の責任を問う第三者への対応に要した費用を株式会社が役員に払うことは可能なのでしょうか。

役員が第三者に賠償した金員を株式会社が役員に補償したり、第三者への対応費用を株式会社が役員に補償することは可能ですが、元年法は、補償の範囲を限定した上で、補償契約の内容の決定を取締役会乃至株主総会で決議することを必要としていますので、注意が必要です。

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2. 役員賠償責任保険

役員が損害賠償責任を負う場合に備えた「D&O保険」があるように聞きましたが、どのようなものですか。

D&O保険とは、いわゆる「会社役員賠償責任保険」(“Directors and Officers Liability Insurance”)の略称です。株式会社が保険者(保険会社)との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が填補することを約するものであって、役員等を被保険者とするものをいいます。430条の3・1項では、「役員等賠償責任保険契約」とされています。
元年法で、契約の締結に必要な手続等が定められましたので、注意が必要です。

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3. 取締役の報酬の決定

取締役の報酬は、どのように定める必要があるのでしょうか。今回の法改正で、これまでよりも報酬の決定について具体的な定めが必要となったように聞きましたが、どう変わったのでしょうか。

会社法361条は、取締役の報酬について、定款に定めていないときは株主総会の決議によることが必要と定めています。元年法は、①上場会社等の取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会決議により具体的に定められていない場合は、取締役会においてその内容についての決定方針を定めなければならないこととしました。また、②取締役の報酬等として株式又は新株予約権を付与する場合には、定款又は株主総会の決議により、当該株式又は新株予約権の数の上限等を定めなければならないこととしました。

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4. 報酬に関する議案の理由説明

取締役の報酬等について、株主総会に議案を提出した場合、取締役は、金額や算定方法等の説明だけすればよいのでしょうか。

取締役は、取締役の報酬等の金額や算定方法の定め又はその改定について、その内容のみならず、当該事項を相当とする理由を説明しなければなりません。

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株主権

1. 株主提案権

私は、私が株式を保有する非公開会社の株主総会で、いくつか議案を提出したいと思っています。議案提出の方法や制限について教えてください。

まず、あなたが、総会の議場において、取締役から提案された議案に対し、修正動議を提案する場合には、特に数の制限はありません。ただし、内容が法令や定款に違反する場合、又は、過去に同様の提案を行って否決されていた場合、制限されたり、拒絶されたりすることがあります。
また、あなたが会社に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求したり、あなたの議案の要領を事前に他の株主に通知を求めたりすることも考えられます。

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2. 議案要領通知請求権の数の制限

元年法で議案要領通知請求権(株主提案権 解説②(b))に数の制限が課されるようになったと聞きましたが、内容を教えてください。

取締役会設置会社においては、株主が提出しようとする議案の数が10を超える場合、10を超える数に相当することとなる数の議案については、取締役はこの請求を拒絶できることとなりました(305条4項)。

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3. 会社資料の閲覧請求

私はある株式会社の株主ですが、会社の資料について何をどこまで入手することができますか。

定款、株主名簿、計算書類等、株主総会議事録及び合併等関係書類は、持株数にかかわらず、閲覧謄写が可能です。ただし、株主名簿は、請求理由を明らかにする必要があり、一定の拒絶事由もあります。
会計帳簿又はこれに関する資料に関しては、100分の3以上の持ち株が必要で、請求理由も明らかにする必要があります。
監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社であれば、裁判所の許可があれば取締役会議事録の閲覧謄写が可能です(それ以外の会社は許可が不要)。
定款及び株主名簿は直近分、計算書類等は過去5年分、会計帳簿、株主総会議事録及び取締役会議事録は過去10年分の請求が可能と考えられます。

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4. 株主総会の決議を争う場合

株主総会で、私が株主として議案の提案を行う予定ですが、説明を途中で妨害されたりしないか懸念しています。説明妨害で提案が否決された場合、私が後日総会決議を争うことはできますか。また何か事前の対策はありますか。

決議の方法が著しく不公正であるとして、決議取消訴訟を提起することが考えられます。
また、株主総会に先立ち、検査役の選任申立を行うことも考えられます。

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感染対策と株主総会

1. 定款の定めと開催時期

緊急事態宣言が発出されたことにより、定款で定められた時期に株主総会を開催することが難しくなりました。時期をずらすことは可能でしょうか。どのようなことに気をつければよいでしょうか。

開催困難な状況が解消された後、合理的な期間内に開催することが可能です。ただし、定款で定める基準日から3ヶ月以内に開催できない状況が生じたときは、新たに基準日を定め、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります。

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2. 感染対策

株主総会は予定どおり開催しますが、株主の出席を制限することも許されるでしょうか。会場では、どのような感染防止措置をとるべきでしょうか。

感染拡大防止のために株主の来場が一定制限されることも認められますが、株主権の行使に重大な支障が生じないようにすることが必要です。会場においては感染防止措置を徹底することが必要です。

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3. リモート株主総会

今後を考えると株主総会をリモート会議の形で開催したらどうかと思っていますが、可能でしょうか。リアル総会とリモート総会を併用する場合はどうでしょうか。

会社法上、リアル総会の開催は必須であり、リモート総会のみの株主総会は認められないと解されています。ただし、2021年6月施行の「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」により、一定の要件を満たす上場企業に限り「場所の定めのない株主総会」開催が可能となりました。リアル総会を開催する一方で、当該リアル総会の場に在所しない株主についても、インターネット等の手段を用いて遠隔地からこれに参加/出席することを許容する形態(いわゆる「ハイブリッド型バーチャル株主総会」)は可能です。

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4. 参加型バーチャル総会の開催方法

参加型のハイブリッド型バーチャル総会は、どのようにして開催するのですか?議決権の行使はどのようにして行うのでしょうか。

開催されるリアル総会の様子を動画で配信し、株主は予め提供されたID・パスワードなどを使用して配信を受ける形が想定されています。議決権の行使は、従来通り書面や電磁的方法により事前に行うことが必要です。

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5. 出席型バーチャル総会における留意点

出席型バーチャル総会の開催のためには、どのような仕組みが必要ですか。本人確認の方法や議決権行使の方法はどのようにしたらよいですか。質問や動議についてはどう扱ったらよいでしょうか。

リアル総会とインターネットを通じて参加する株主との間で、情報伝達の双方向性と同時性が確保されているといえる環境があることが必要です。議決権の行使もインターネットを通じて行うこととなりますので、通信障害への対策や本人確認手段の確保が必須で、途中参加や途中退席などへの配慮も必要となります。質問や動議を処理することには困難も予想されることからルールの設定が必要です。質問や動議の可能性がある場合にはリアル総会への出席を促す措置も考えられます。

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